星を見に行こう。

星がみたいと言い出して、
すこし無理を承知で冒険に出てみた。


空っぽになりそうなタンクに、5000円分のガソリンを詰め込む。
排気ガスをガンガンに出して、東名をズンズン進む。
地図なんて無くたって、標識がぼくらを案内してくれる。


東京からずっとつづく246を御殿場から逆走。
ICのおじさんに教えてもらったとおりの場所を右折する。


目の前に広がるのはまったくの闇。
遠くのほうの空の高いところに明かりが見える。
まったくの闇の中に星よりも明るすぎる光は、どうしようもなく不自然だ。


道を駆け上がる程に側道の木々が迫ってくる。
光が徐々に減っていく。
光を失ったミラーたちは役割を失う。


気温が下がってくる。
空気が不気味さを増す。


敏感すぎると気持ちが悪くなるほどの闇。
でもそれは、現実的になりすぎた日常から自分を引き離してくれる。


怖さを側において、ヘッドライトを消す。
忘れかけられていた星たちが役目を与えられなおす。


8月20日までは交通規制がかかっていて、上まで上れなかった。
日の出まであと少し。
富士の山を背に猛スピードで湖を目指す。



車のエンジンを切って、キーを抜く。
そして、綺麗過ぎる不思議な朝の側で眠ることにした。