遠い未来を眺めて一瞬先に夢を託す

今の自分のいる状況が、考えれば考えるほどに、なんだか不幸だな上手くいってないなという気がするときがある。
そんな時は、週末には友達に会えるとか、来月には好きなライブに行けるとかそういうのを目標にがんばろうって思ったりする。


ちょっとした未来に目標をすえて、そこを目指して自分で自分の背中を押す。



石田衣良の最新作”美丘”ではそんな日常では当たり前のはずの時間の感覚を失っていく女の子が描かれていた。病気で脳がやられていって、5分前のことも覚えていられない。それに明日生きていられるかも分からない。だからはじめは彼女は自分に未来なんて無いと思っていた。周りにいるみんなもそう思っていた。今週末、好きな彼に会うということに希望を託すことなんて出来なくなっていた。でも、未来って動かすことが出来るんだって発見して、彼女は1分先の目標を目指して今を生きて、1分前の思い出によって自分を支えられるようになった。それってすごく難しいことだと思う。僕たちは、1分先にそんな目標になるようなことは待っていないと思うし、たった1分前に自分を支えてくれるような思い出が出来ているはずが無いと思っている。でも、ようく考えたら、幸せってそんなに感じるのが難しいことじゃないような気がしないか?ってその本には書いてあった。


それに、もう一つ、逆に時間の位置をすごくすごく遠くにすえるってことも書いてあった。


その子の命が消えるまで、どれだけ病気が進行しても、どれだけ健康だったころの彼女と変わってしまおうとも、それをも受け入れて、彼女のそばにいようって決めた、そういう男の子が描かれていた。


時間の位置をずらしてみる。そうすることで、今まで出会えなかった色々な現象に出会えることは、この本じゃ無くても、普段の中でいろいろと試してみることは出来ると思う。生活の中で大切なものには、お金とか友達とか夢とか色々とあるけれど、誰にとっても平等にある時間は、誰にとっても平等に扱えるみんなの共有財産だと思う。時間の扱い方、演出の仕方、そういうものが同じものを違うように見せる魔法の道具だと思うのでした。